薄暗い王座の間に、まっすぐ扉から光が差し込み、二つの影が伸びる。
光自门扉直射而入,照在昏暗的王座上,伸拉出两个人影。
こつりと静かな靴音と、床を引きずる衣擦れの音。痛いとわめいているのは――母親だ。頭を片手でつかまれ、腰を落とした状態で引きずられている。
「母上! クロード、な、何をしている母上を放せ!」
母亲!库洛德、你、你在干什么还不放开母亲
「ピエール! ピエール、この子を止めてちょうだい、痛い、痛い!」
皮埃尔,快让他停下来,痛,痛!”
少女のような母親の体が、壇上の玉座まで投げ飛ばされた。まるで荷物を扱う乱雑さだ。
把少女一般母亲的身体,往王座那边扔掷。简直就像拎行李一样随意
足元に落ちた母親の姿に、冷や汗が流れる。
掉落在他脚边的母亲、冷汗直流
恐る恐るうかがった息子の両の瞳は、赤。
儿子的双瞳令人恐惧的、已成赤红。
「アイリーンは、ああ見えて意外とかわいらしいところがあるのです、父上」
别看艾琳这样,没想到出乎意料有可爱之处呢、父亲大人
穏やかに微笑みながら、魔王が一歩ずつ、王座に向かって歩いてくる。
露出温柔的笑、魔王一步一步逼近王座。
「家族にきちんと認められて結婚したいと思っているし、僕の人間関係が希薄なことも気にしている。だから彼女の願いをかなえてやりたいと思ってました」
我本打算为求家人认同而好好结婚、也十分在意自己稀薄的人际关系。所以,她的心愿我想要为她完成。
クロードが玉座を登るための大階段の手前で、足を止めた。
库洛德在王座的台阶前、停下脚步。
「だがそれで甘い顔をしていたらこれだ」
但我对你们的纵容迎合到此为止了
「ピエール……ピエール、何をしているの兵を呼びなさい! 誰か」
皮埃尔……皮埃尔、你在干什么还不快叫卫兵!来人啊
叫ぼうとした母親の喉がひゅっと鳴った。
想大喊的母亲低声惊呼
突如としてクロードの横に現れたのは、妙に部品の多い、大きな柱時計だった。確か母が大切にしていた魔法具だ。
奇异的零件拼装而成的大悬钟、突然出现在库洛德的旁边。那正是母亲视如珍宝的魔法具。
そっとクロードが魔法具に手を当てる。同時に光り輝きだした。内側から炸裂する光に、目をむいた母親が髪を振り乱して絶叫する。
库洛德轻轻地把手放在魔法具上,具散发出光辉。魔法具内四射迸裂出光芒、目瞪口呆的母亲头发被弄乱、她尖叫着。
「やめっ……やめてやめて、それだけはやめてえぇぇ!」
住……住手快住手、唯有那个不要破坏!
だがその願いもむなしく、その時計は内側からはぜた。ばらばらになり燃え尽きて、ただの灰の山になる。
可是愿望落空、那个悬钟膨胀炸裂、七零八落地燃烧殆尽,变成一堆灰烬之山
呆然と、母親がその場でへたり込む――が、すぐに怒りに目をもやし、紅を塗った爪で大理石の床をひっかいた。
母亲当场就呆住了——但、很快眼睛喷出怒火、红色的指甲划伤了大理石地板
「よ、くも……! よくも、この化け物が!」
“竟、然敢……!”竟然敢,你这个怪物!”
「ひどいことをおっしゃる。僕はあなたが毎日必要としたものを作ることができるのに」
“您这话过分了。我可是有制作你每日必需品的能力哦
そう言ってクロードがその手に、青い飴玉のようなものを取り出した。
库洛德边说边从手里拿出像蓝色糖果一样的东西。
母親が目の色を変えて、階段を転がり下り、息子が持つその青いものに手を必死で延ばす。
母亲脸色都变了,从楼梯上滚下来,拼命伸手抓向儿子手中的蓝色东西。
「それを、それをよこしなさい。妾に早くっ……早く!」
“把那个、把那个给我。快给本宫……快!
だがクロードは一度手を振って、手品のようにそれを消してしまった。
但是库洛德一甩袖、手中物就像魔术一样消失了
悲鳴を上げた母親が、その足元にすがる。
跌坐在库洛德脚边的母亲、发出悲鸣。
「な、なにが望みなの。あの娘の命? 魔物の討伐命令の撤回?」
你、你想要什么。放过那女孩的命?撤回魔物讨伐令?
「……は、母上」
没错、母亲大人