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【官方】Short Story キョウゴ编

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キョウゴ编
ルシア
「――ホリック叔父様は、どこですか!?」
『买い物に出かけていた叔父様が、街角で倒れてわたしを呼んでいる――』
そう知らせにきてくれた若い男の人に连れられ、わたしは薄暗い裏路地へやってきた。
でもそこに叔父様の姿はなく、见たことのない男の人がニ人いて……。
困惑しているうちに、わたしはその三人に取り囲まれていた。
リーダー格の男
「叔父様? あはは、そんなもの最初からいやしねーよ。
 だって俺达はアンタに用事があるんだからさ。ルシアちゃん♪」
ルシア
「え? それって、どういうこと?」
リーダー格の男
「ま~、悪い话じゃねえよ?
 俺达の雇い主の贵族様が、吃茶店でマジメに働くアンタに一目ぼれして、
 どうしても二人きりで会いたいって言ってるわけ。
 だからこれからちょっとだけ、付き合ってくんない?」
ルシア
「じゃあ、叔父様が倒れたっていうのは嘘なんですね!? ……よかった」
リーダー格の男
「ルシアちゃんはこんな状况でも叔父様の心配しちゃうわけ? 健気だねぇ!
 さ、それじゃ、さっそく一绪に贵族様のお邸までいこっか」
ルシア
「……わたし帰らせてもらいます」
来た道を戻ろうとすると、わたしを案内してきた気弱そうな男の人が行く手を塞ぐ。
気弱そうな男
「おっと。ここまで来て帰るだなんて、仆の苦労を无駄にしないでくださいよ?
 吃茶店に行った时、噂のルシアさんの幼なじみってのが、
 いつ现れるかってずっとヒヤヒヤしてたんですから」
ルシア
(それって、キョウゴのこと……?)
リーダー格の男
「なんでもアンタの店には、とんでもなく腕の立つ幼なじみが入り浸っていて、
 吃茶店を守る骑士(ナイト)気取りらしいじゃん? そりゃあ、こっちもビビるよね?
 だから俺达もさ、念には念を入れて腕利きの用心棒を雇ったってわけ」
気弱そうな男
「仮にそのナイトさんが助けに来たとしても、こっちが雇った用心棒が返り讨ちにしてくれるってわけです。
 どうです、仆达贤いでしょう? ……って言っても、それも余计な心配だったみたいですけどね。
 肝心なときに现れてくれないナイトなんて、ほんと意味ないですよね。ははは」
乱暴そうな男
「ふん……。だから言ったんだ。俺达三人で十分。用心棒なんて雇う必要ないってな」
リーダー格の男
「ってことでさ、大人しくしてよ?
 俺达も、ルシアちゃんみたいなカワイイ子に、あんまり乱暴なことはしたくないからさ」
三人の男の人は、ニヤニヤ笑いながらわたしに诘め寄る。
ルシア
(――助けて、キョウゴ!!)
リーダー格の男
「さて、と……ってことで、どうやら出番はないようですよ!
 今日は、もう帰っていいっす、用心棒さん!
 次の机会にまたお愿いしますわ!」
路地裏の奥の暗がりに向かって、声をかけるリーダー格の男の人。
その声に反応して、人影がゆっくりと近付いて来る。
???
「そういう訳にはいかねえんだよな」
リーダー格の男
「は? なんでですか?」
???
「その子に用があるからさ」
リーダー格の男
「この子に……?」
ルシア
(え? この声ってまさか……)
ルシア
「キョ、キョウゴ!?」
キョウゴ
「よう、ルシア。大丈夫か、なんか変なことされてないよな?」
ルシア
「うん、今のところは……」
キョウゴ
「そうか、よかった。
 ……ったく。いつもマスターがオレのこと専属ナイトなんて呼ぶから、
 吃茶店の客の口から街中に広まってんだろ、どうせ」
リーダー格の男
「それじゃあ、ナイト気取りの幼なじみって……ひょっとしてアンタ!?」
キョウゴ
「まあ、そういうことになるな」
リーダー格の男
「えっと、つーことは……俺达、ナイト退治にナイトを雇っちまったって、そういうことかよ!」
乱暴そうな男
「まさかお前、裏切る気か!」
気弱そうな男
「そ、そんな! さっき前金渡したじゃないですか!」
キョウゴ
「それはそうだけどよ。大体、话が违うんじゃねーか?」
ルシア
「话……?」
キョウゴ
「ああ。自分には駆け落ちを约束した相手がいる!
 その娘には鬼畜のような叔父がいて、家から出られずに困ってる。
 だから、彼女を救い出すのを手伝ってくれ!!
 ……とか嘘泣きまでしやがって」
気弱そうな男
「そ、それは、ちょっとだけ脚色させてもらっただけで、その……」
キョウゴ
「脚色ねぇ。
 じゃあ、その鬼畜のような叔父ってのは、ひょっとしてマスターのことだったりすんのか?
 まったくあのオッサンのどこか鬼だよ。まあ、変人ではあるけど」
そう言ってキョウゴは、呆れたように笑う。
キョウゴ
「つう事でさ、今回は金返すわ。
 まだ、ルシアにも手荒なマネはしてないみたいだし。
 今なら许す。さ、わかったら帰んな、ほらほら」
手をひらひらとさせて、男の人たちを追い払う仕草をするキョウゴ。
リーダー格の男
「ふ、ふざけんなよッ! 今更んなこと――」
言い终わらないうちに、
キョウゴがいきなりリーダー格の男の人の胸ぐらを掴んで引き寄せる。
キョウゴ
「オレの用心棒稼业の信条は、世のため人のためなんだよ、あきらめな。
 それにな、ルシアを骗して攫(さら)おうとした、それだけでも肠(はらわた)煮えくり返ってるんだぜ? 本当は。
 ただ、今ならまだ许してやる、そう言ってるだけなんだよ」
静かに、でも低く威吓するような声で言い放った后、男の人を突き放すキョウゴ。
リーダー格の男の人は、そのあまりの迫力に尻饼をつく。
リーダー格の男
「く、くそぉぉ。こうなったら、お前ら、やっちまえ!」
キョウゴ
「おいおい、やめとけって」
キョウゴが呆れつつ、警告する。
気弱そうな男
「やっちまえっていっても、相手はあの……!」
乱暴そうな男
「ふん! こっちは三人だ。负けやしねえ、ほらっ!」
気弱そうな男
「ひ、ひい……」
裏路地の隅に积んであった鉄パイプに気が付いた乱暴そうな男の人が、腰が引けている気弱そうな男の人にそのうちの一つを投げて渡す。
リーダー格の男の人も、お尻の汚れを叩き落としながら、鉄パイプを手にとる。
じりじりと、ゆっくりキョウゴを取り囲む三人。
キョウゴは、わたしを庇うようにしながら、路地の奥へと诱导する。
キョウゴ
「すぐ済むから、そこでじっとしててくれよ? ルシア」
そして、わたしの安全を确保すると、キョウゴも鉄パイプを手にとった。
キョウゴ
「……知らねえからな、ケガしても」
ゆっくりと口から息を吐き、背筋を伸ばすキョウゴ。
キョウゴが构えた途端、周りの空気が张り诘める。
キョウゴ
「来るならいつでも。どうぞ?」
穏やかな、でも自信に満ちた表情で相手を见据えるキョウゴ。
その底知れない圧力に、三人组はなかなか动けないようだ。
リーダー格の男
「くっ……」
気弱そうな男
「や、やっぱりヤバイですって、この人『ケンドウ』って武术の使い手だって噂なんですよ!」
リーダー格の男
「な、なにビビってんだよ! 行けっつってんだろ!」
乱暴そうな男
「俺がやる! おらぁッ!」
武器を大きく振り上げて、一番体の大きい男の人がキョウゴを袭う。
ブンッと、空気を震わせて力强く缲り出される攻撃を、キョウゴはいとも简単に避けてみせる。
そして、一瞬の隙を见逃さず素早く踏み込んだキョウゴの一撃が、その男の人のお腹を払う。
乱暴そうな男
「ぐはぁ……」
鉄パイプはカランと音を立てて落ち、男の人はそのまま崩れ落ちる。
その様子を确认して、何事も无かったかのようにまた静かに构えをとるキョウゴ。
キョウゴ
「……これであと二人な? で、まだやる?」
キョウゴは、またも静かにリーダー格の男の人に寻ねる。
リーダー格の男
「く、くそぉ。コイツ、ホントに强えよ!
 そ、そうだ、おい女だ! 女を押さえろ――!」
気弱そうな男
「は、はい!」
リーダー格の男の人に命令されて、キョウゴの横で缩こまっていた気弱そうな男の人が、わたしの方へと走り寄る。
キョウゴ
「はい、じゃねえよ。ルシアに触んな!」
わたしの方へ振り返りながら放ったキョウゴの攻撃が、わたしを捕まえようとする男の人の首筋を捉えた。
気弱そうな男
「ぎゃ――!」
首筋を打たれた男の人は、糸が切れた人形のようにカクンと膝をついて、わたしに倒れかかってくる。
その重みで、わたしも思わず尻饼をついてしまった。
ルシア
「いたっ……!」
キョウゴ
「大丈夫か、ルシア?! ケガとかしてないか?」
すこし慌てたキョウゴが、わたしを抱き起こす。
ルシア
「うん、ありがと。あ――! キョウゴ、危ない后ろ!」
いつの间にかキョウゴの背后に忍び寄っていたリーダー格の男の人が、鉄パイプを振り上げていた。
リーダー格の男
「くらえ――ッ!」
キョウゴ
「ちっ……しまった!」
とっさにキョウゴは、わたしを抱きかかえて庇う――
浑身の力で振り下ろされた鉄パイプが、キョウゴの背中にめり込む。
キョウゴ
「グッ……!」
痛々しい音とともにキョウゴが苦しそうな声を上げた。
ルシア
「キョウゴっ!!」
リーダー格の男
「へ、へへへ、なんだよ噂のナイト様も大したことねーじゃん!
 女庇ってやられてりゃ、ざまぁねぇっての! このまま、もう一発トドメ――」
そのとき――ゆらり、とキョウゴが立ち上がった。
ゆっくりと相手の男の人を振り返るその眼は、今まで见たことがないほどに怒りに満ちていて――。
ルシア
「キョ、キョウゴ……だめだよ! ね、キョウゴ!」
わたしは必死にキョウゴを谏(いさ)める。
キョウゴは普段は优しいけれど、本当に怒った时には手が付けられないくらいに自分を见失ってしまう事がある。
小さい顷、それを见かねたホリック叔父様に勧められて今のケンドウを习い始めたくらいに……。
リーダー格の男
「し、死にぞこないのくせに、これで终わりだ――ッ!!」
豹変したキョウゴを见て慌てた男の人が、もう一撃と鉄パイプを振り下ろす。
でもキョウゴは、相手の手首をガシリと掴み、その攻撃をいとも简単に防いだ。
リーダー格の男
「く、くそ、はなせ、はなせよッ!!」
リーダー格の男の人は、なんとか捕まれた手を离そうと暴れるけれど、キョウゴの腕はビクともしない。
キョウゴ
「……危ねえじゃねえか、さっきの。もしもルシアに当たったら、どうしてくれんだよ?」
怒りを握りつぶすようにキョウゴの左手が、ぎりぎりと相手の手首を缔め上げる。
リーダー格の男
「い、痛い! 折れる! た、助けて……」
キョウゴ
「だめだ。今はもう……许さねえ」
そのまま、男の人の腕を背中にねじり上げると、裏路地の壁めがけて投げ飞ばした。
リーダー格の男
「がふ――ッ!」
壁に激突した男の人は、口から泡を吹いて、気を失ってしまった。
キョウゴ
「ったく。ルシアに、手出すなって言ったろうが。
 しかも、思いっきり殴りつけやがって、つい本気になっちまったじゃねーか……」
背中を擦りながら、足元に崩れている三人に声をかける。
やっぱり、キョウゴって段违いに强い……。
キョウゴ
「お前ら、これに惩りたらケチなことはやめとけよ。って、闻こえてねーか」
相手がのびていることを确认してから、キョウゴがわたしの方へ心配そうに寄ってくる。
キョウゴ
「大丈夫だったか、ルシア? どこもケガないか?」
ルシア
「大丈夫だよ。安心して、キョウゴ」
キョウゴ
「ほんとか? だったらいいんだけど、まったく……」
安心して、息を吐くキョウゴ。
そのとき突然、パチパチパチと、どこかのんきな拍手が裏路地に响き渡る。
ホリック
「やあ、ルシア専属ナイトくん! さすがに、お见事だったねぇ~」
そこには、拍手をしながら裏路地に入ってきたホリック叔父様の姿があった。
ルシア
「叔父様……!」
キョウゴ
「なんだよ、マスターいつからいたんだよ!?」
ホリック
「私の可爱い侄っ子が攫われたとあってはね、空を飞んででも助けに来るってもんさ。
 で? 殴られた背中の方は、大丈夫かい……?」
キョウゴ
「ん、ああ、まーな。オレの体は小さい顷から、女神様に守られてるらしいから」
ホリック
「……そうだったね。それにしても腕とかお尻とか真っ黒だよ?」
叔父様は、まるで小さい子供にするかのようにキョウゴの服の汚れを叩いて払う。
ホリック
「まったく君は、子供の顷からおんなじ汚れ方をして帰ってくるよねぇ」
キョウゴ
「そういうあんたも、いつも现场に现れるのはトラブルが済んでからだろうが?」
ルシア
「二人とも、ありがとう。それにごめんなさい、わたしが简単に骗されたから……」
ホリック
「君が気に病むことはないよ。どうやら相手はあまり素性の良くない连中のようだしね。
 ま、详しいことは帰ってから闻かせてもらうとしよう」
キョウゴ
「そうそう。さ、店帰って午后の支度するんだろ?」
ルシア
「うん。そうだね」
二人の优しさに包まれて、さっきまでの怖さもどこかへ吹き飞んでしまう。
ルシア
「じゃ、帰ろっか。ちゃんと用意もしてあるし」
キョウゴ
「ん? なんの用意だよ?」
ルシア
「キョウゴが连れてきちゃう子犬たちのご饭。
 だってほら、すでに一匹、そこの影から心配そうに覗き込んでるよ?」
路地の影から、怖いけど兴味津々といった感じで覗き込んでいる一匹の子犬。
きっとまた、キョウゴにくっついてきちゃったんだ。
ホリック
「さ、帰りはゆっくり地面を歩いて帰るとするか、みんな行くよ~」
叔父様にうながされ、わたしも帰路につく。
裏路地を振り返ると、キョウゴが子犬を抱き上げて话しかけていた。
ルシア
(ここからだとよく闻こえないけど、なにを话しているんだろ?)
キョウゴ
「ったく。
 结局、なんにもなかったから良かったようなものの、あいつはいつもトラブルに巻き込まれるんだよなぁ。
 これだから、あいつから眼が离せないんだっつーの。
 なあ、チビスケ。お前もそう思うだろ? ん?」
ルシア
「キョウゴ、どうしたの? 早く帰ろうよー!」
キョウゴ
「ああ、すぐ行くってー!
 だからあいつは、ルシアはオレがしっかり守ってやらないと……。
 まあ、いつまで侧にいられるか分からないけどな……」
文责:サンクチュアリ


1楼2014-03-31 18:07回复